
例えば、あなたが買おうとしている車の使用者が法人Bでローン会社Aの所有権留保となっているとします。法人Bはすでにローンを完済していますが、所有権留保解除はまだされていない状態です。
この車の所有権留保の解除と同時に使用者をあなたに変更し、さらにローン会社Aの所有権留保としたいと考えています。
この場合、一度の手続きで所有権留保の解除とし、所有者(ローン会社A)、使用者(あなた)の状態とすることができるのでしょうか?
結論から申し上げますと可能でした。
というのは、これは実際にあったケースだからです。ではどのような書類が必要なのか、どのような手続きになるのかを回想しながら解説していきたいと思います。
今回の内容は、複雑な権利関係であったため運輸局に問い合わせながら慎重に進めた結果として実際に実現できたというものです。一般的な案件ではないので安易に応用できるかどうか不明です。このことを御理解のうえ参考程度にご覧ください。同様の案件を手掛ける場合は必ず事前に運輸局に問い合わせてから進めるようにしてください。
まずは状況を確認しよう!
今回の内容は権利関係が複雑なので、まずは状況を再確認したいと思います。
A=ローン会社 B=法人
所有者・・・A(所有権留保)
使用者・・・B
この車の所有権留保を解除。
所有者・・・B
使用者・・・B
Bからあなたへ譲渡して同じAの所有権留保とする。
所有者・・・A(所有権留保)
使用者・・・あなた
この2段階の手続きを1度で現在からSTEP 2へできないだろうか?という話です。
使用者だけ変更することはできないのか?
鋭い方はお気づきかもしれませんが、現在からSTEP 2は使用者がBからあなたへ変更しているだけです。
ですから、わざわざ2段階に手続きをせずとも使用者を変更するだけでよいのではないか?と考える方もいらっしゃるかもしれません。
そこで運輸局に訪ねてみたところ、運輸局的には「ローン会社が認めればOK」とのことでした。
ローン会社は自ら所有権留保などの手続きは行いませんので、車屋さんや個人がローン会社から委任を受けて代理で手続きを行うことになります。よって実質的にはローン会社からの委任状に使用者変更の委任事項が含まれているかがポイントになるわけですが、どうやら基本的にローン会社は使用者変更は認めていないようです。(※ローン会社によっては認めているかもしれません。)
したがって、今回のケースでは所有権留保のまま使用者だけ変更することはできなかったので、2段階の手続きを1度で行うことになりました。
法人Bの管轄は気にしなくてもOK!
もしも法人Bが品川ナンバーの管轄内の法人で、あなたは愛知県小牧市に住んでいるとします。
本来AからBへ名義変更するだけであれば、手続きはBの管轄である東京で行う必要があります。しかし今回のケースでは、1度の手続きであなたへ名義変更するため、Bは書類上経由するだけです。
このとき、最終的な管轄(あなたの住所地である愛知県小牧市)の運輸局において手続きすることが認められます。
必要書類
次にA、B、あなたの三者がそれぞれどのような書類が必要なのか解説していきます。
ローン会社Aの必要書類
・委任状
・印鑑証明書
・譲渡証明書
・委任状
・印鑑証明書
ローン会社のAは所有権留保の解除<STEP 1>と所有権留保の設定<STEP 2>に関する書類が必要になります。このとき、委任状は委任事項が異なる別々の委任状になりますのでご注意ください。
所有権留保解除と所有権留保設定ではローン会社の書類の手配方法が異なる!?
ローン会社は手続きを代行してはくれません。よって車の使用者や車屋さんがローン会社の書類を手配しなければなりません。
ちなみに所有権留保の解除と設定では、ローン会社の書類の手配の方法が異なりますので注意が必要です。
所有権留保解除の場合
解除をする場合は、事前にローン会社へ連絡してローンが完済されたことを連絡します。そうすると、後日<STEP 1用>の3つの書類が送られてきます。
所有権留保設定の場合
設定の場合は、ローン会社から「所有権留保登録依頼書」という書類(※名称はローン会社によって異なる可能性あり)が送られてきます。それを書類交付窓口へ提出すると、引き換えで<STEP 2用>の2つの書類をもらえます。
書類交付窓口とは、基本的に運輸局内にある代書事務所(委託を受けた行政書士が代行業務を行っている窓口)です。(※すべての運輸局が同じかどうかまではわかりませんが。)
法人Bの必要書類
・申請書
・車検証
・委任状
・印鑑証明書
・譲渡証明書
Bは所有権留保の解除で一旦所有者の立場となり、所有者としてあなたへ車を譲渡することになります。
委任状と印鑑証明書は1部で足りた!?
今回は2段階の手続きとなるので、本来であればBの委任状と印鑑証明書は所有権留保解除用とあなたへの名義変更用の2部ずつが必要となるはずですが、運輸局側の便宜的な対応のおかげで1部ずつで足りました。
※他の運輸局によっては2部ずつ必要という判断がされるかもしれません。この点は特に要注意です。必ず事前に問い合わせて確認するようにしてください。
書類の不備に気を付けよう!
書類が省略できたのは1度にまとめているからです。もしも書類の不備などで手続きが分裂してしまった場合は、書類の省略はできなくなりますので注意が必要です。
あなたの必要書類
あなたはBから車を譲り受け、Aの所有権留保の設定をします。
<STEP 3用>
・申請書
・手数料納付書
・印鑑証明書
・委任状
・車庫証明書
・自動車税申告書
通常の名義変更と変わりありません。
運輸局へ手続きに行くと、とにかく混雑していて長時間待たされることがよくあります。 しかも座って待つことができればまだ良いほうで、混雑がひどいときには立って待たなければならない時もあります。 おそらくあなたも、できれば書類 …
手数料は省略できない!
今回のケースでは2段階の名義変更分(500円×2)の1,000円がかかります。さすがに1回分とはなりませんでした。納め方は、STEP 2であなたが手配する手数料納付書に1,000円分の印紙を貼ればOKです。
手続きの流れ
手続きの流れは基本的に通常の名義変更と変わりません。異なる部分は、手数料が2倍になるのと上記の書類を一度にまとめて提出するということだけです。
運輸局に行ってみると良く分かるのですが、建物内部には長いカウンターがあって、番号が振られた窓口がいくつも並んでいます。 当然ながら、運輸局は名義変更だけを仕事としているわけではありませんから、それぞれの手続きに応じた窓口 …
まとめ
いかがでしょうか?
なるべく分かりやすくなるように心がけて作文しましたが、ご理解していただけたでしょうか。
大変ややこしい案件でしたので、少しでもスムーズに進むよう弊所の場合は書類一式に権利関係の表す付箋を貼って提出しました。窓口担当者も間違えてはいけないプレッシャーがあると思いますので、こちらの意図をきちんと伝えておく方がよいと考えたからです。
結果として滞りなく名義変更が完了したので、心底ホッとしました。
今回の内容は決して頻度の高い事案ではないと思います。一生お目にかかることはないかもしれませんが、万が一当事者となったときに参考にしていただければ幸いです。
今回の内容は、複雑な権利関係であったため運輸局に問い合わせながら慎重に進めた結果として実際に実現できたというものです。一般的な案件ではないので安易に応用できるかどうか不明です。このことを御理解のうえ参考程度にご覧ください。同様の案件を手掛ける場合は必ず事前に運輸局に問い合わせてから進めるようにしてください。
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