相続による名義変更|自動車の相続と第三者への譲渡を同時にできるか?

例えば、あなたの親族が亡くなり、あなたは法定相続人の一人だとします。亡くなった親族は車を所有していたため相続財産として車が残っているのですが、あなたを含め他の相続人もすでに車を持っているため処分に困ってしまいました。

そこで、売却して現金化し相続分で分割しようと思ったのですが、最近免許を取得した親戚の子が車を譲ってくれないかと言い出しました。親戚の子は法定相続人ではありません。相続人一同はこれを承諾しているのですが、このとき亡くなった親族から親戚の子へ一度に名義変更できるのでしょうか?

冒頭から長いストーリーになってしまったのですが、これはあなたにも十分起こりえるシチュエーションではないかと思います。事実、先日このようなご依頼をいただきました。

結論から申し上げると、被相続人(亡くなった方)から相続人ではない第三者へ名義変更することは可能です。しかも1回の手続きでできます。

ただし、いくつか注意点がありますので、そのあたりを含めて詳しく解説していきたいと思います。

注意!亡くなった方から直接名義変更はできない!?

亡くなった方から第三者へ1回の手続きで名義変更できると申し上げましたが、直接という意味ではありません。

なぜなら、亡くなった方は権利義務の主体になることはできません。言い換えると、亡くなった方は所有権を持つことはできませんし、譲渡の承諾をすることができないからです。

ではどうやって名義変更するのでしょうか?

そこで登場するのが相続です。不動産も同じことなのですが、亡くなった方の車を第三者に名義変更するためには、相続手続きを省略することはできません。

1回で行うというのは、

つまりこうゆうこと!

・車を亡くなった方から相続人へ相続する。
・車を相続した相続人から第三者へ譲渡する。

この2つの内容を1回の手続きで行うという意味になります。

まずは車の相続人を決めよう!

具体的な名義変更の手続きに入る前に、まずは車の相続人を決めておきましょう。

前述したとおり、亡くなった方から第三者への名義変更は1回の手続きでできるのですが、相続手続きを省略することはできません。したがって、形式的に一旦相続人に所有してもらう必要があるため、その相続人となる人を決めておく必要があります。

誰が適任なのか?

実際のところ相続人であれば誰でも構わないのですが、書類を手配したり署名押印をする必要となってきますので、相続手続全般を主導している代表相続人の方が行うのが一般的です。

もし車を譲り受ける者が親戚だった場合は、最も近い親族(相続人)が行ってもよいかもしれません。

車だけの相続人を決めればよく、他の財産分与については決まっていなくてもOK!

車の相続による名義変更については、車だけの相続人が決まっていればよく、他の財産の相続(預金や土地など)の分割方法が決まっていなくても問題ありません。

はやく車を譲渡したいというような場合は、先行して車の相続人を決めてしまえば速やかに処分をすることができます。

必要書類(普通車)

それでは、相続と譲渡を同時に行う場合の必要書類をご紹介します。

必要書類はこちら
  • 申請書 ×2(亡くなった方→相続人、相続人→第三者の内容のもの)
  • 手数料納付書 ×1(譲受人の氏名を記載)
  • 車検証
  • 亡くなった方の戸籍謄本 ×1 ※発行されてから3か月以内のもの
  • 遺産分割協議書 ×1(相続人全員の署名と実印)
  • 相続人と譲受人の印鑑証明書 ×各1 ※発行されてから3か月以内のもの
  • 譲受人の車庫証明書 ※証明の日から40日以内のもの
    駐車場に変更がない場合は不要
  • 使用者の住所証明書 ※新所有者と新使用者が異なる場合のみ
    個人の場合は住民票や印鑑証明書など、法人の場合は商業登記簿や印鑑証明書など
  • 委任状 ×1(代理人に依頼する場合は相続人と譲受人の住所氏名)
  • 自動車税申告書 ×1(譲受人のもの)

申請書は2部必要!

申請書は相続用(亡くなった方から相続人へ相続)のものと譲渡用(相続人から第三者へ譲渡)の2つの内容のものが必要になります。

亡くなった方から直接第三者へ譲渡する内容の申請書は認められないのでご注意ください。

手数料は2倍!1,000円かかります。

申請書と同様で、手数料も2回分(1,000円)かかります。よって、1,000円分の印紙を手数料納付書に貼って提出します。

なお、印紙の組み合わせはどのようでも構いません。

改正原戸籍も手配しておくと安心!

車の相続手続においては亡くなった方の戸籍謄本が必要になります。戸籍謄本からは亡くなった事実と相続人全員を確認できることが必要になります。

ここでは詳しい説明は省きますが、場合によって相続人が記載されていないことがあります。このとき、改正原戸籍を請求することで相続人を確認することができるのですが、最初に手配してしまった方が無難かと思ます。

相続人の印鑑証明書は代表者だけでOK!

遺産分割協議書には相続人全員の実印が必要になるのですが、提出する印鑑証明書については相続人全員分は不要で、車を相続する代表者のものだけで足ります。

もちろん、譲受人の印鑑証明書は必要になりますので、間違いのないようにしてください。

遺産分割協議書の様式はこちら

相続人全員の氏名住所の記載と実印による押印が必要となります。

※画像をクリックすると拡大できます。

まとめ

いかがでしょうか。

2回分の手続きを1回で行うという点で、通常の名義変更よりも必要書類が少しややこしくなるかもしれません。

さらに所有権解除などが絡んでくる場合はもっと複雑になってくる可能性があります。難しいそうだなと感じたら無理せず行政書士に相談してみてください。